更新日:2026年3月31日
「食べちゃ駄目なのは、わかっているんですけどねぇ」
「好きなものを好きなだけ食べて生きていけないんですかねぇ?」
ある女性客が言っていました。
入社一年目の彼女はスイーツが大好き。甘いものばかり食べてしまう。5月と12月に胃が不調になったが、その前に過食の時期があった。その時期は「食べれるだけ食べれて幸せでした」とコメント。大学2年生の頃からもたれやすくなった。
仕事でのストレスが大きいようで、甘いものを食べることがストレス発散になっていると推測される。ストレスから満腹中枢が麻痺してしまい、スイーツを好きなだけ食べられるが、胃は酷使されているのでダメージを受けたのでしょう。
以前にも、別の女性客が同じようなことを言っていました。
「20代前半のように食べれるだけ食べるのは無理なんですかねぇ?」
20代後半の彼女は食べること、お酒を飲むことが大好き。外食では満腹まで食べてしまう。旅行に行くと食べ過ぎてしまい、胃が痛くなりがち。年齢を重ねるうちに暴飲暴食はしなくなってきたが、イベントごとになると食べ過ぎてしまう。
『好きなものを好きなだけ食べて生きる』と聞かされると、私が以前に施術した男性客を思い出します。そのときは、出張マッサージのお店で働いていたので、お客さんの自宅で施術をするわけです。高級マンションのキングサイズのベットでマッサージをしました。40代の細身の男性で、いかにも体調が悪そうな様子。下肢をみると変色しているので、壊死しかけているのかもしれません。糖尿病だと思いました。
その男性が、マッサージ中にベッドサイドに置いてあった饅頭を寝ながらの姿勢で食べ始めたのです。「食べちゃ駄目なのは、わかっているんですけどねぇ」と気弱な声でいいます。私は正直なところ「ぞっ」としました。足を切断しなければならない状況になっても、甘いものを食べることを止めることができないことにです。医者や周囲の人から色々言われてきたのでしょうが、食べ続けているのでしょう。
その男性客を施術したのは、その一回だけだったので、その後のことはわかりません。しかし、強い印象が残りました。
東洋思想家の安岡正篤氏は"三識"ということを言っています。
・知識…頭で知っているだけの情報
・見識…知識を経験に基づいて理解
・胆識…見識を胆力で正しく行動
「食べちゃ駄目なのは、わかっているんですけどねぇ」と言っていた男性は、"知識"では知っているし、"見識"でも理解しているはずです。しかし、"胆識"で正しく行動はできていない。つまり、分かっているつもりになっているけど、出来ていない。分かっていることと出来ていることは全く違うことに気づいていないといえます。
とはいえ、食欲は本能です。本能を完全に止めることは難しい。これは、"煩悩"との付き合い方のカテゴリーになっていくような気がします。
二人の女性客には、この糖尿病の男性の話をしました。その話をどう思って、それからの行動がどうなったのかはずっと追跡できるわけではないのでわかりません。
ちなみに、『好きなものを好きなだけ食べて生きる』と聞くと、私が連想することが他にもあります。ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』です。千尋の両親が、屋台で食べ続けているうちに豚になっていたシーン。
印象的です。
<関連コラム> ・
記憶を失くすまで飲む心理とは?:お酒と心の微妙な関係 ・
「わかってるんだけど…」という口癖はストレスを増大させる?