【発育症例】触覚過敏があり、異常にくすぐったがる
ASDとADD傾向のある中学一年生の男子。親御さんが、子供には原始反射が残存しているのではないかと考えて遠方から来院。
異常にくすぐったがりで、触覚過敏がある。問診のチェックリストでは、「ベタベタされるのを嫌がる」の項目と「スキンシップは好きなほうだ」の両方の項目にチェックがされている。
以前、医師の診察のときにお腹を触られた場面で異常にくすぐったがったことを話してくれる。
しかし、私が彼に触れてもくすぐったがったり、身体を硬直させるわけでもない。それは、私が彼に警戒心を抱かせないよう(心理面)に、順番を考えて触っていった(身体面)からでもあります。「この人は危険ではないな」と思ってくれれば、元々スキンシップが好きなタイプでもあるので、触れられても過剰に反応することはなくなります。
触覚過敏の人は、さわられたときに警戒モードに陥りがちです。
警戒モードに陥り易い要因のひとつに、「原始反射の残存」があるといわれています。脳幹が過敏に反応してしまうことと関係しています。
そして、原始反射の検査を行なうと、すべての項目で陰性。原始反射は残存していないことを親御さんに伝えると、少しびっくりした様子。
警戒モードは、「中枢性感作」という「脳が様々なことに敏感になる現象」が起こっていると考えられます。聴覚過敏や触覚過敏のように感覚面が敏感になったり、不安が増大するなど感情面も敏感になったりします。
そして、原始反射でも『警戒モード』になりますが、感覚過敏があったり、不安が続いても『警戒モード』になります。それは、脳が疲労しているからです。感覚過敏や不安はストレスです。ストレスが続くと、脳が疲労してしまいます。
ASDの特性に感覚過敏がありますが、物理的なストレスや化学的なストレスを我慢していると脳は疲労していきます。すると、中枢性感作が起こり、感覚がさらに過敏になっていくというループが出来上がります。
このお子さんの場合は、触り方に気をつければ触ることはでき、原始反射の検査では陰性だったので、中枢性感作(脳が敏感になっている現象)が起こっていると推測されます。
また、彼がベッドに寝そべったときの姿勢から、身体図式(ボディマップ)が育っていないことが分かりました。ボディマップは、前庭覚、固有覚、触覚の統合によって形成されて、一般に6歳ごろまでに基本的なイメージがつくられるといわれています。
そこで、親御さんがお子さんにできるセルフケアを指導しました。遠方から来ているので通うことはできないのですが、今後は、ボディマップを育てることをやっていくことで、脳がバテづらくなっていき、触覚過敏が治まることにつながっていくと説明しました。
アドバイスとして、自分で自分自身をリラックスさせる方法を見つけていくことも大切という話をしました。緊張しがちなタイプはリラックスすることが苦手です。身体の緊張をとることは、脳を休めることにもなります。日々の脳バテ対策が、警戒モードを解除することにつながっていくのです。